ボリビア~労働を強いられる子どもたち~

★サンタ・クルスの日系人との出会い

今回は、ボリビアを旅したときのお話で、
教育の重要さについて考えさせられたお話です。

これも30年ほど前の話なんですが、
教職員としての夏休みを利用して
3週間ほどボリビアを旅してきました。

旅のさ中、サンタ・クルスという
ボリビア第二の都市で、
たまたま日経3世の方にお会いしました。

その方は、サンタ・クルス郊外に農場を所有し、
ボリビアでは比較的富裕層の方だったと思います。

ご自分の所有する広大な農地近くの、
大きな邸宅に住んでいらっしゃいました。

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お名前はたしか、タケシタさんだったと記憶しています。

私は、そのタケシタさんのおはからいで、
一週間ほどお宅に宿泊させていただいたのです。

その一週間は、農場の仕事を手伝ったり、
ワニのハンティングを見学させていただいたり、
サンタ・クルスの街を一緒に
観光させてもらったりと楽しく過ごさせていただいていました。

タケシタさんとは、いろいろな話をしました。

日系三世とはいえ、
いまだに日本人としてのアイデンティティーがあり、
そのことに誇りを持っているということ。

ボリビアは好きだが、将来に不安を感じることがある。

日本では、愛国心をもつことがタブー視
されていることについて、まったく理解できないことなど。

★コカの葉

さらに、話題は教育についても及びました。

タケシタさんが大きな農場を
持っていたということをお話ししましたが、
そこには住み込みで3家族ほどが小さな小屋に住んでいました。

住んでいたのは、現地のいわゆる先住民族の方

農場で住み込みで働くその方々は、
明らかに貧しく、着ている服も粗末に感じられました。

タケシタさんは、毎朝その家族の子や
一つ一つを回りながら声をかけ、
今日もよろしくお願いしますといった言葉をかけていました。

そして、何やら袋を渡していたのです。

袋の中身は葉っぱのようなもので、
それは何なのかと聞くと、コカの葉だと教えてくれました。

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その葉は、コカインの原料でもあるコカの葉で、
ガムのように噛むと空腹感や
眠気を防いでくれるといい、
労働者はそれを欲しがるとのことでした。

今はどうなのかはわかりませんし、
当時もそれが合法なのか違法なのかは
わかりませんでしたが、
常識的に考えて体に良いはずはないはずです。

ただ、空腹でも、寝不足でも働くためには、
それが必要だったのでしょう。

★学校に行けない子どもたち


そして、もう一つ気になったのは、
その農場内にある小屋の中に子どもたちもいたことです。

別に、家族ですから、
子どもたちの姿があることは
不思議なことではありませんが、
明らかに学校に行っていないであろう
ことが気になったのです。

タケシタさんに聞くと、
やはり学校には行っていないとのことでした。

ボリビアでは、経済的な理由で学校に行かさなくても、
そして家計のために働かせても
親が処罰を受けることはなく、
むしろ学校に行くことのできる
子どもの方が少ないというようなことを話していました。

少し古い資料になりますが、
2016のユニセフの報告ではボリビアでは、
家計を助けるために約50万人の子どもが
路上の靴磨きや露店などで働いてたり、
農場や鉱山などでの労働を強いられているとのことです。

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その頃、私は小学校の学級担任として、
40名近い子どもたちを教えていて、
日々さまざまなトラブルもありながらも
仲間と苦楽を共にしながら育っていく子どもたちを見て、
幸せな気持ちになったものです。

一方、ボリビアでは目の前に、
学校で友達と勉強し遊ぶといった
楽しみを知らずに育っている子どもがいる。

胸を締め付けられる思いがしました。

★悲しいエピソード


タケシタさんからは、さらに、
悲しいエピソードを聞きました。

ある日、小屋を訪問すると、
子どもが熱でうなされていて、
これは病院で治療しなければ危ないかもしれないと
思ったタケシタさんは、親に治療費を渡し、
すぐに病院に行きなさいと促したそうです。

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しかし、その日の夕方に、
もう一度その小屋を訪れると、
子どもは亡くなっていたそうです。

親は、子どもを病院に連れて
行っていなかったのです。

しかも、タケシタさんが渡した
治療費を食事に使ったということなのです。

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つまり、治療よりも、
食べることにお金を使ってしまったというわけです。

これにはタケシタさんも激怒し、
親を責めたらしいのですが、
タケシタさんの怒りの理由が、
あまり伝わっていないようで、もどかしかったとのことでした。

実は、他の農場でも似たようなことがあり、
タケシタさんも「治療費」はあげない方がいい
と言われていたらしいのですが、
まさかそんなことがあるはずがないと信じていなかったようです。

このボリビアの農場労働者の行動は、
私たち、おそらく多くの日本人にとって
まったく理解のできない行動だと思います。

子どもを助けるためなら、
自分の命を捧げても惜しくないと思うのが、
親の心情だと信じているからです。

★3つの要因


私はタケシタさんに、
この労働者の行動について、その疑問を聞いてみました。

すると、タケシタさんは、素直に「わからない」と答えました。

ボリビアに住むタケシタさんにも、理解できない行動なのです。

ただ、もしかすると、
あくまで推測のレベルですと
前置きしながら、3つのことをお話ししてくれました。

1つは、彼らの極限的な貧しさです。

衣食住足りて礼節を知るという
言葉があるように、貧しさは、
礼節どころか、通常人がもっているはずの
本能すら狂わせてしまうということ。

2つ目は彼らの死生観

生き死にはすべて
神の思し召し(おぼしめし)だ
考える死生観をもっているのか。

そう考えているかもしれないとのことでした。

3つ目が教育です。

論理的に考える思考です。

病気になれば、病院に行き診断してもらう。

そして、適切な治療を施してもらうとともに、
薬を処方してもらう。

すると治癒していく。

この当たり前の論理が、
もしかしたらこの労働者の方々にとっては、
すぐには理解できるものではないかもしれない。

そのようなお話でした。

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教育にたずさわる人間として、
教育の重要さについて、あらためて考えさせられました。

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