「非認知能力が育っていない」?~PISA結果が語る日本の子どもたちの潜在能力②~

★37カ国中34位!

前回は、PISA調査で示された日本の子どもたちの高い学力と、その結果に対する「知識の定着に成功しただけ」という分析について、私なりの見解を述べました。

今回は、おそらくその分析の真意であったであろう「非認知能力」の低さという指摘について、さらに深く考察していきたいと思います。

PISA調査では、学力を測定する調査と同時に、子どもたちの学習に対する意識を問う質問紙調査も行っています。

ここで特に注目されたのが、「自律学習と自己効力感の指標」が37カ国中34位という低い結果です。

【第4回】どう読む?どう生かす?PISA2022レポート 〜自律学習の自信と探究的なICT活用〜2023年12月5日、PISA(OECD生徒の学習到達度調査)2022の分析結果が公開されました。日本が世界トップ水準の学www.toyokan.co.jp

宮田先生は、このデータをもって「日本の子どもたちは非認知能力が育っていない」と結論づけていますが、私はこれに強い違和感を覚えます。

日本の子どもは主体的に学ぶ意欲がない? 学力は高いのに自律学習が苦手な原因(PHPオンライン) – Yahoo!ニュース日本の教育界はいま、明治時代以来およそ150年ぶりの大転換期を迎えています。この流れは日本にとどまらず、世界中で起こっていshare.google

★非認知能力とは何か

そもそも、非認知能力とはどのような力なのでしょうか。

非認知能力は、IQや学力テストでは測れない、個人の内面的なスキルを指します。

具体的には、以下のようなものが含まれます。

・何かに興味関心を持つこと

・目標の達成に向けて自らを鼓舞すること

・困難な状況でもあきらめずに最後まで粘り強くやり抜く力

・他者と協働できる良好な関係を築く力

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確かに、PISA調査の結果だけを見ると、自律学習や自己効力感といった項目で、日本の子どもたちは他国に劣っているように見えます。

しかし、これをもって日本の子どもたちの「非認知能力が低い」と断定するのは早計です。

なぜなら、非認知能力の評価は非常に難しく、アンケート調査だけでその本質を捉えきれないからです。

★日常に見る「非認知能力」の証

私は、世界各国の教育現場を直接見てきたわけではありませんが、日本の子どもたちが非認知能力に欠けているとは到底思えません。

例えば、私はよくバスを利用するのですが、小学生から高校生まで、下車する際にはほとんどの子が「ありがとうございました」と運転手さんにお礼を言います。

これは習慣とも言えますが、子どもたちの表情やしぐさから、心からの感謝の気持ちや他者への配慮の姿勢が伺えるのです。

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また、学校現場では、近年、発達障害や性同一性障害などを抱える子が増えていますが、それらの子たちに対する周りの子どもたちの配慮の姿勢には感心させられることが多いのです。

彼らは、先生から指示されたわけでもなく、自らの判断で友人を支え、共に活動しようとします。

これは「他者と協働できる力」や「共感力」といった非認知能力の表れに他なりません。

★「自己肯定感の低さ」は文化が影響している?

一方で、客観的なデータとして「日本の子供たちの自己肯定感は国際的に見て低い」という事実も存在します。

内閣府の「国際比較調査」やユニセフの「子ども幸福度調査」など、様々な調査がこの結果を示しています。

しかし、この結果を額面通りに受け止めていいのでしょうか。

ここには、日本の文化的な背景が深く関係していると私は考えています。

欧米諸国のような個人主義的な文化では、自己主張や成功体験が重要視されます。

そのため、アンケートに対しても「私は自信がある!」と堂々と答えることが当たり前とされています。

一方、日本では「和を重んじる」ことや「他者との調和」が重視される傾向が強いです。

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そのような文化的背景の中では、たとえ心の中で自信があったとしても、自らを過剰に肯定するような回答はしにくいものです。

この国民性が、自己肯定感に関する調査結果を低くさせている可能性は大いにあると思いませんか。

★才能ある人ほど、自分を過小評価する?

さらに、心理学の観点からもこの現象を説明できる可能性があります。

「ダニング=クルーガー効果」という言葉をご存知でしょうか?

これは、能力が低い人ほど自分の能力を過大評価し、逆に能力が高い人ほど自分の能力を過小評価する認知バイアスです。

この効果は、PISAで高い学力を持っていた日本の子どもたちが、同時に自己肯定感が低いという結果と見事に符合します。

また、「インポスター・シンドローム(詐欺師症候群)」も関連しているかもしれません。

これは、高学歴者や成功した人々が、自身の成功は実力ではなく、運や偶然によるものであり、いつか自分の無能さが露呈するのではないかという不安を抱く心理状態です。

これらの心理的要因は、知能の高い生徒や才能のある生徒が、完璧主義や高い自己基準を持つ傾向があるために起こると考えられています。

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つまり、能力が高いからこそ、自身の限界や不足を客観的に認識しやすく、それが自己評価の低さにつながっているのです。

常に学力上位の秋田県や富山県の子どもたちの自己肯定感が低いことも、これらの心理的要因が影響していると私は思っています。

★非認知能力の評価は慎重に

文部科学省の調査では、日本の子どもたちは「協力性や粘り強さ」「人と協力する力」「最後までやり抜く粘り強さ」など、特定の非認知能力が高いことが示されています。

このように、非認知能力の評価は非常に難しく、ひとつの調査結果だけで全体を判断することはできません。

宮田氏は、日本の教育界に大きな影響力を持つ方です。

だからこそ、各種データの分析については、もう少し細やかで冷静な分析と、未来を担う子どもたちへの温かい配慮をお願いしたいと強く思うのです。

私たちは、データに振り回されるのではなく、子どもたちが持つ潜在能力を信じ、それを引き出す教育を追求していくべきではないでしょうか。

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