早めの贈与で子の資産形成を加速させる~相続時精算課税制度~
★贈与税のつけ払い
現在、相続税の包囲網はかなり広がっていて、気づかないうちに多くの方が相続税の課税対象者になっていますよ。
前回はそういう話をしました。
https://note.com/embed/notes/n566b358df0c0
こういった話を聞くと、
「もう何をしても相続税は避けられない」
と感じる方もいるかもしれません。
しかし、あきらめてはいけません。
実は、近年の税制改正では厳しくなった部分だけではなく、新たな活用方法も生まれています。
その一つが、2024年に改正された「相続時精算課税制度」です。
以前よりも使いやすい制度へと改善されています。
今回はその
「相続時精算課税制度」
についてお話します。
まず、「相続時精算課税制度」とはどのような制度なのか説明します。
名称からして難しそうですね。
しかし、仕組みは意外とシンプルです。
一言で言えば、
「今、生前贈与をして、今の価格で相続のときにまとめて精算しましょう」
という制度です。
この制度を活用すると、親や祖父母から子や孫へ、上限2,500万円まで贈与税を納めずに財産を渡すことができます。
ただし、「税金がゼロになる」という意味ではありません。
相続が発生したときに、それまでに贈与した財産を相続財産に加え、まとめて相続税を計算する仕組みなのです。
つまり、「贈与税をなくす制度」ではなく、「相続時にまとめて精算する制度」ということです。
そのため、この制度の名前には「精算」という言葉が使われています。
「贈与税のつけ払い」といってもいいかもしれません。

★親子で資産形成を進めることのできる制度
では、どのようなメリットがあるか考えてみます。
相続時精算課税制度の最も大きなメリットの一つは、
「将来値上がりしそうな財産を早めに子どもへ移転できること」
です。
現金は1,000万円を贈与しても、10年後も基本的には1,000万円です。
しかし、土地や自社株などは価値が大きく変わる可能性があります。
例えば、父親が駅前近くにある土地を所有していたとします。
現在の相続税評価額は2,000万円です。
しかし、近くで再開発計画が進んでおり、将来的には値上がりする可能性があります。
そこで父親は、相続時精算課税制度を利用して、この土地を40代の息子へ贈与しました。
そして、その息子はその土地にマンションを建設し、家賃収入を得たのです。
10年後、予想通りその地域の再開発が進み、土地の評価額は4,000万円になっています。
通常であれば、この4,000万円が相続財産として評価されます。
しかし、相続時精算課税制度では、贈与した時点の評価額、つまり2,000万円で相続税を計算するのです。
値上がりした2,000万円分は相続税の対象になりません。
しかも、その10年間、息子はその土地を活用した不動産投資により、家賃収入を得ることができたのです。
息子自身の資産形成にも役立ったというわけです。
もし相続まで待っていたら、土地価格の値上がりで相続税の圧力が高まったうえに、息子は資産形成を進めることもできなかったのです。
つまり、相続時精算課税制度は、
「将来値上がりする資産を早めに移すこと」
と、
「子どもが早く資産を活用できること」
という二つのメリットを同時に得られる可能性があるということです。
ということで、相続時精算課税制度は
「節税制度」
だけでなく、
「資産を次世代へ早くバトンタッチする制度」
だと考えてください。
そういった意味では、
「親子で資産形成を進める制度」
だとも言えます。

★相続争いを未然に防ぐ効果あり
さらに、この相続時精算課税制度には、あまり語られていないもう一つのメリットがあります。
それは、相続人同士の争いも防ぐことができるというメリットです。
そもそも、相続時精算課税制度を進めるにあたっては、事前に家族間での話し合いが必要です。
だれにどの財産をどれだけ渡すのかを、決めなくてはならないからです。
親が元気なうちに、親の財産の活用について家族で話し合うことができる。
このメリットは大きいと思います。
大抵の場合、親が亡くなり、相続が発生してから財産の分割について話し合いが行われます。
しかし、その時にはもうそこには親がいないのです。
そうなると、話し合いをうまくまとめることが難しくなってきます。
そこで出てくるのが「相続争い」です。

相続が発生した場合、親族間で大なり小なりのゴタゴタがあるものです。
だからこそ、ご両親がお元気な時にこそ、「相続時精算課税制度」について考えてみてほしいのです。
★注意点
一方で、この制度には注意すべき点もあります。
まず、「必ず節税になる」とは限らないということです。
基本的には、
「将来値上がりが見込まれる財産がある」
という場合にのみ、節税効果が生かせる制度であるということを理解しておいてください。
あと、この制度を一度選択すると暦年贈与制度へ戻ることはできません。

暦年贈与とは、親から子や孫に贈与をしても、毎年110万円までなら贈与税がかかりませんという制度です。
相続時精算課税制度よりも、こちらの方が知名度が高いと思います。
例えば今後、その暦年贈与の非課税枠が拡大されたとします。
現在は110万円ですが、それが300万円に拡大した。
その場合も、その制度は使えません。
とはいえ、相続時精算課税制度を選択しても、毎年110万円までは基礎控除として贈与税がかからない制度へと改正されています。
引き続きその枠は使えるのです。
ですので、そこまで心配することもないと私は考えています。
どちらを選ぶかは資産状況によります。
ということで、この相続時精算課税制度は、相続税対策だけでなく「親子で資産形成を進める制度」という意味でもお勧めの制度です。
ぜひご一考ください。
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