悩まされても否定してはいけない理由
私が校長だった頃、あることで保護者から苦情が入ったことがありありました。 その保護者の子は、学級内でよくトラブルを起こす子でした。 その日もその子がトラブルに関わっていていて、 先生はその子に対して「またお前か」、 といったニュアンスの言葉を口にしてしまったのです。 その言葉に保護者は憤慨していたのです。
どのような学級にも「困った子」がいます。 でもほんとうは「困った子」ではなく、「問題を抱えている子」なのです。 その子に罪はありません。 まだ成長過程にある子は、自分の行為・行動を客観的に判断する力がまだ育っていないのです。 悪い行いをいくら根拠をもって説明しても、感情レベルではわかったとしても、自制心はまだ発達の途上にあり、コントロールできないのです。 そうはいっても、日々、大勢の子ども達の問題に対応している先生にとって、その子のことだけを考えている余裕がないのです。 なので、理屈を示して一方的に言い聞かせてしまったり、 つい否定的なことも言ってしまったりするのです。 私もそうでした。
先生たちのその気持ちは痛いほどわかります。
ただ、保護者にとってわが子は、 命に変えても守りたい、かけがえのない存在なのです。 そんなわが子のことを、 その子の先生が否定するようなことがあれば、 それはもう、心をえぐられるような悲しみでしょう。
先生も追い込まれた状況の中で、
つい口をついて出てしまったのかもしれません。 私には理解できます。
でも保護者には、「先生はわが子を否定した」としか映らないのです。 ですので、苦しい状況であっても、
決してその子のことを否定するようなことを言ってはいけません。
そのことは肝に銘じておきましょう。
60歳を超える私の同級生の中には、
幼いころ、家庭に恵まれず非行にはしり、 いつも先生に指導ばかりされている人もいました。 しかし、彼らの多くは、その後更生し立派になっています。 議員になっている人、会社の社長、 保護司になり、自分と似たような境遇の子どもたちを引き受けている人もいます。 みんな異口同音に「先生を困らせて悪かった」と口にします。 先生の苦労や悩みは、大人になってからしかわからないものなのです。 その子の行為について怒ってもいいですし、時に叱ることも必要です。 でも、その子の人間性を否定する言葉だけは口にしないよう気を付けてください。
親が過保護過ぎて問題を起こすのでしょう。悪い事をしながら世の中をわかっていくのに少しでも枠を外れると、きっとダメな事は許さないと親が縛るので、学校では抑圧された自分を表現したかったんだと思います。