自分をすてる

さて、本日は「自分をすてる」というお話です。

特に校長先生や教頭先生などの管理職を務めていらっしゃる先生方に向けてお話をしたいと考えています。

「自分をすてる」と聞くと、それ何?って思うかもしれません。

自分の生き方を否定するとか

自分の個性をなくしてしまうとか、

そんなことではありません。

自分の欲を捨てるということです。

承認されたいとか、名誉が欲しいとか、成果を上げたいとか、何かを自分が得たいという欲です。

なぜそんなことを言うのかといいますと、管理職になったときにこの自分を捨てるという
マインドセットがとても大切になってくるからです。

1つ事例を取り上げてみます。

元、京都大学アメフト部監督に、水野彌一(みずのやいち)さんという方がいます。

水野さんは、1965年に京都大学アメフト部のコーチに就任し、1974年から監督を務めました。

弱小チームと言われた京都大学アメフト部を
4度も日本一に導き、その指導論は教育界や実業界で注目を集めた方です。

彼が日本一のアメフト指導者になれたことには、あるエピソードがあったと言われています。

ある試合の休憩中、副キャプテンの四年生が「ちょっと頭が痛い」と言ってきたのですが、


凄い体当たりをしたわけでもなかったので、ベンチで休ませていたらバタッと倒れてしまった。

すぐに救急車で搬送したのですが、結局駄目だった。

つまり彼は帰らぬ人になってしまったのです。

水野さんは、もう自分も生きられないと思うほど苦悩したらしいです。

しかし、自らも命を断つとか、監督を辞めるなどと言うのは、彼が望むことではない。

むしろ自分が、自分の人生を全て人のために捧げないとフェアじゃないと考えたのです。

水野さんは、捧げるとは、「自分をすてること」だと思ったと言います。

もう自分のことはどうでもいい、と腹を括ったのです。

それまでは「自分が選手を育てる」「自分がチームを強くする」


「自分がチームを日本一にする」と、とにかく自分が強かったんです。

その「自分」という我欲を捨てたのです。

不思議なことに、なかなか勝てなかったチームが、
それから勝てるようになってきたといいます。

水野監督は「選手の間に上下関係は作らない。」「新人の練習参加は自由」


「部室の掃除やグラウンドの整備といった雑務は4年生が行う」という方針を立てるなど、当時としてはかなりユニークな指導をしています。

監督やコーチも一緒になってトイレ掃除などをしていたと言います。

「選手の自主性が活かされるべき」「選手が自ら伸びようとする力を引き出す」

「監督やコーチは選手を育てるのではなく、育ちたいという姿勢を徹底的に支援する」

こうした指導観を持ちながら監督生活を送られたといいます。

で、何が言いたいかと言う事ですが、管理職である校長先生や教頭先生も、水野監督と同じ境地に立ってほしいということです。

自分を捨てて、すべての力を職員の育成に捧げてほしいのです。

校長先生や教頭先生方は、ほとんどの方がすばらしい教師だったと思います。

しかし、その姿勢は、どこまでも「自分ファースト」だったはずです。

いやいや、私は子どもたちのために頑張ったんだとおっしゃるかもしれません。

しかし、そこには「私が育てる」という意識があったはずです。

一教師としての立場ならそれで良いのです。

むしろ素晴らしい。

しかし、管理職としての意識としては、まだ未熟です。

水野監督と同じようにまずは自分をすてるのです。

「私が教師を育てる」「私がこの学校を日本一の学校にする」

この意識はまだまだ自分を捨てていません。

どこかに「承認されたい」「名誉が欲しい」「成果がほしい」といった
「自分」という意識が奥底には隠れています。

その我欲をすべて捨て去るのです。

わかった。

じゃあどうしたらいいんだということですが。

まずは、職員の自己実現を支援するのです。

大げさかもしれませんが、職員は仕事に人生をかけているのです。

いやいや、そんな人ばかりではないとおっしゃるかもしれません。

確かに職員の中には、そのことがまだ意識化されていない方もいるかもしれません。

しかし、管理職は職員の人生を背負っていると考え、
職員一人ひとりの自己実現を支援すると言う姿勢を持ってもらいたいのです。

一人ひとりの職員に対し、あなたはどう生きたいのか、

どういう教師として教師人生を歩みたいのか、どんな人生を描いているのか、と問いかけて欲しいのです。

そして、職員のこうなりたいという「なりたい自分」に対して、
管理職は精一杯支援してほしいのです。

それができたときに、おそらく水野監督と同様に、
素晴らしい学校づくりができているはずです。

「この職場ではたらけたことは私の一生の財産になった」という言葉を
職員から聞くことができたのなら、
管理職としての校長教頭の仕事は自分を捨てた仕事だったと言えると思います。

私は教育委員会に勤めているときに、多くの学校を訪問させてもらい、

多くの校長先生、教頭先生方と話をする機会に恵まれました。

すべての管理職の皆さんは本当に一生懸命頑張られています。

ただ、まだまだ自分をすてきれていないなと思われる管理職もいらっしゃいました。

それほど「自分をすてる」というのは難しいことなんだと思います。

そういう私であっても、管理職のときには我欲が顔を出すことはそっちゅうでした。

ですので、「自分をすてる」ということが簡単でないこともよくわかっています。

簡単ではありませんが、管理職という教師人生の集大成において、

より良いゴールができるよう、この自分をすてると言う気持ちを忘れないでいただきたいなと思います。

ということで、本日は自分を捨てると言うテーマで、
主に校長先生や教頭先生と言う管理職の皆さんに向けて、自分をすてて、

つまり我欲を捨てて、職員の自己実現を全力で支援してほしいというお話でした。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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