タンザニア~マラリアで死にそうになった話~
タンザニアで発熱、病院へ
35年前、1989年、私はアフリカを旅していました。
旅のスタートから2か月が
過ぎたころ、疲れからか、
灼熱のアフリカで寒気がしたのです。
風邪気味だろうから、
十分睡眠をとれば治るだろうと高をくくっていました。
すると、夜中から高熱に浮かされ始めたのです。
翌朝、這いつくばるように近くの病院に行きました。
長く海外を旅してきましたが、
海外で病院に行ったのは初めてでした。
お医者さんは、軽い問診をした後、
さっとカルテを書き、
「薬を出します。以上」と機械的な対応をしてきました。
この間、わずか3分程度。
深刻そうな顔もしていない。
これくらい簡単な診断で
終えようとしているということは、
単なる風邪かもしれないとは思いました。
が、一応念のため「病名は?」と聞いてみました。
するとお医者さんの
口から出てきた病名は、「マラリア」。
一瞬、聞き違えたかと思い、
「パードゥン?(もう一度お願いします)」
と聞き返してみました。
すると、
「だから、マラリアだよ。
この病名知らないの?」と少しいらだった口調で聞いてきます。
いや、知っているけど、、、。
マラリアなら、精密検査とか、
点滴とか、もっと手厚い処置を
してくれるのかと思ったのですが、
風邪の患者への対応と
変わらないであろうその対応に、不安になりました。
薬局で薬をもらう時も、
「はい、これマラリアの薬ね。1日3回、食後に飲むんだよ」で終わり。
あまりにそっけない対応でしたが、
社会主義の国だからしょうがないかとあきらめました。
注:タンザニアの経済は
自由化されてきているものの、
憲法には社会主義国家であると明記されています。
マラリアとは
知っているとは思いますが、
一応、マラリアがどのような病気なのか説明しておきます。
マラリア原虫という
寄生虫を持つ蚊に刺されることで、感染します。
症状は、一般的に、発熱、悪寒、
頭痛、筋肉痛、関節痛、嘔吐、下痢などがあります。
重症になると、意識が混濁したり、
けいれんを起こしたりすることもあるとのこと。
治療法としては、抗マラリア薬の使用が一般的。
ということで、タンザニアで、お医者さんが私に
「薬を出しておくから、養生していろ」
といった処置は、
決して適当であったわけでなく
スタンダードだったということです。
意識混濁!
ということで、
とりあえず宿泊している安宿に戻り、
薬を飲んで寝ることにしました。
しかし、症状は回復するどころか、
さらに熱が上がり、震えあがっていました。
三半規管がやられたのかと思うほど、
立ち上がって歩こうとすると、目が回るのです。
トイレに行くのにも、
壁をつたって、這いつくばって行く状態。
寝ていても、悪夢にうなされ、
意識も混濁していました。
それでも
何か食べなければならないと、
果物を口にするのですが、すぐに吐いてしまいます。
さすがに「こりゃまずい」と思いました。
一瞬ではありましたが、死を意識したのです。
アフリカの果ての安宿で、
日本人がマラリアで死んだなんて、
ニュースにもならないでしょう。
こんなところで死んだら
親不孝ものだ、
なんてネガティブな思考が頭をかけ巡り始めました。
そうこうしているうちに、
3日ほどが過ぎ、
買っておいたミネラルウォーターもなくなりました。
しかし、宿を出て
水を買いに行く力が残っていません。
宿のスタッフにお願いして、
水を買ってきてもらおうかとも
考えましたが、
病気であることを知られたら、
宿を追い出されるのではないかと心配でした。
バックパックを担いで、
別の宿を探す体力など残っていませんでしたから。
また、病気であることをいいことに、
部屋に入られて、
お金などを持ち去られるのではとの警戒もしました。
今思えば、考えすぎだったとは思うのですが、
意識が朦朧としていて、
判断力も低下していたのでしょう。
水道水とチョコが救ってくれた
ということで、しばらく水を飲むのを我慢していました。
ただ、当然ですが、
しばらくしてのどの渇きが
抑えられなくなってきていました。
それで、しかたなく、
部屋の水道から水を飲むことにしたのです。
「アフリカでは、水道水を飲んじゃいけない」
今はどうかわかりませんが、
そのころのアフリカ旅行者の間では常識でした。
アフリカの水道水は、
水源となる河川や地下水が
汚染されていることが多く、
その水を飲むことは非常に危険だったのです。
しかし、背に腹は代えられません。
まずは、コップに水道水を入れ、
臭いをかいでみました。
なぜ水の臭いをかぐのか。
旅をする中で、食堂などで出される水で、
飲めない水はかすかに
異臭がすることを経験で知っていました。
幸い、その宿の水道水は臭いませんでした。
それでもリスクはありますが、
選択の余地はありません。
グイっと一杯飲んでみました。
どうだったかといいますと、
すごく美味しかったのです。
枯れた大地に、水がしみこんでいくような感覚です。
一杯飲んだ後は、もう止まりません。
気が付くと、何杯も飲み干していました。
すると、身体の中の
「生命維持装」が、稼働し始めた感覚がありました。
まず、朦朧としていた意識が
少し明瞭になってきました。
食欲も少しだけでてきたので、
わずかな食料として残っていた板チョコを食べてみました。
この世のものとは思えぬ美味しさ。
その甘美さは、例えようがありません。
栄養分が直接血液に溶け込み、
脳髄に注がれるていくような感覚に、
しばらく動けなくなるほどでした。
その後、3日間、
水道水とチョコレートだけで過ごしました。
そして、何とかマラリアに打ち勝つことができたのです。
海外旅行中に病気で寝込んだのは、
この時が初めてでした。
日本に帰って何を考えたかといいますと。
あれがタンザニアの病院ではなく、
日本の病院なら、もっと手厚く看護してくれたでしょう。
日本なら、ホテルで水や食料の
買い出しをお願いすることに、躊躇するはずがありません。
そして、日本の水道水は世界一安全です。
日本は天国のような国だ!
あらためて、日本人として生まれたことに感謝した旅でした。
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