パニック売り

私は天才か?

さて、証券口座を開設しましたが、
何に投資をしていいのかわかりません。

で、ネットで調べてみました。

驚いたのは、
専門家によっていろいろだということです。

ある専門家は、IT関連が伸びると言うし、
別の専門家は貿易関連が伸びると言う。

また、金融関連が安定していると
分析する方がいるかと思えば、

金融関連株は危険、
絶対手を出すなと警告する方もいる。

ある意味、無責任の言いたい放題。

もう、何がなんだかわからなくなるわけですよ。

今まで、仕事でわからないことが
あっても、2〜3人に聞けば、ある程度正解を得られました。

ところが株になると、
10人が10人違うことを言うわけです。

これには戸惑いました。

ならばと、株の分析の方法について勉強してみました。

ファンダメンタル分析、テクニカル分析、
クオンツ分析、ニュース分析、セ
ンティメント分析、、、、、、出てくるわ、出てくるわ。

素人に太刀打ちできるレベルのものではありません。

いろいろな本を読み、
多くのサイトを調べたのですが、
結局、自分で考えるしかないわけです。

しかし、考えろって言われても、わかるはずがありません。

あとは「勘」に頼るしかありません。

なので、その当時かなり注目されていて、
業績も伸びていた「バイオ関連株」に投資することに決めました。

はじめて買ったのは、おそらく
「4974 タカラバイオ」だったと記憶しています。

パソコンの操作もはじめてだったので、
キーボードを打つ手が震えました。

投資額を入力し、
Enterを押したときは心臓が爆速だったことを覚えています。

そういった緊張の中での投資でした。

さて、それがどうなったかといいますと。

2〜3週間のうちに、
10万円から20万円ほどのプラスになったのです。

正確な額は覚えていませんが、「なんじゃこりゃ」と思いました。

1日バイトしても4〜5千円なのに(当時)。

お金を預けているだけで、20万円!。

お金が働いてくれている感覚を、このときはじめて知りました。

もちろん、テンションは爆上がりです。

株って意外と簡単じゃん。

そんなことを思ったりしました。

そして、次に建設関連株、
たしか「1720東急建設」だったと記憶しています。

これも、2〜3週間で30万円ほどのプラスになったのです。

ほとんど、分析らしい分析もせずに、
「勘」だけで株を売買し50万円のプラス。

もう、笑いが止まらなくなりますよ。勘

「俺って、投資に向いてるかもしれない。」

もしかして天才?

なんて思うわけですよ。

今考えればビギナーズラックであったことは
明らかなのですが、勝ち続けると人は冷静な自己分析はできなくなります。

「ソフトバンク」の悲劇

その後も、利益を積み上げ、
半年ほどで、かなりの利益を出していました。

でも、投資の神様は
そんなおごり高くなってしまっている
初心者を野放しにはしないんです。

どうなったか知りたいですよね。

わかりました。

お教えいたします。

さて、これだけ連続で勝っていると、
負ける気がしなくなってくるので不思議です。

最初の頃、入力する指が震えていたのが、
流れるように投資金額を入力していけるのです。

また、小さな利益のために
ちまちま投資するのではなく、
一気に増やしたいと思うようになっている自分がいました。

さて、そんな自分がどこに投資したかといいますと。

それは、9984 ソフトバンク」

当時、「ソフトバンク」は、
まだ会社の歴史も浅く、新興企業といった雰囲気でした。

しかし、飛ぶ鳥も落とす勢いで業績を伸ばしていたのです。

気が大きくなっていた私は、
今までの儲けも含めた全資金を「ソフトバンク」に投じたのです。

迷いもなく。

しかも全資金を。

で、どうなったかといいますと。

思っていた通り、毎日プラスに伸びていきました。

いい気になっている自分は、
どこまで伸びるのかという気持ちで、
右肩上がりのチャートを眺めてほくそ笑んでいました。

ところが、その自信は一瞬のうちで打ち砕かれるのです。

ある朝、学校で仕事をして、
休み時間にふとテレビを見たのです。

日経平均がどうたら、
こうたらと騒ぐようなアナウンスが流れてきたのです。

まぁ何が原因だったかわからないんですが、
その日の株価は1000円近く下落をしてしまっていたのです。

慌てて自分の持ち株の動きを見てみると、
なんと恐ろしいほどの損失額になっていました。

今まで儲けた分が
すべて吹っ飛ぶだけでなく、元金まで割り込んでしまう額です。

急落とはこのことでしょう。

山の頂上から転げ落ちていくように、チャートは真下に下っていっています。


そのチャートを見ているうちに、
言い知れぬ恐怖が全身を貫いていきました。

これまで儲けた分を
吐き出してしまうまではまだ良いです。

しかし、元本ともいえる資金まで
失ってしまうのは恐怖でしかありませんでした。

で、どんな行動に出たかと言うと、
慌ててその安値圏で売ってしまったのです。

いわゆる「パニック売り」です。

その時は、「パニック売り」
なんて言葉は知りませんでしたが、
まさしく私の行動は、パニックで思考力を失った見境のない行動だったのです。

株をやったことのある人なら、
この心境はわかると思うのですが。

急激に株価が下がっていく時の心境って、
何と言いましょうか、罪を犯した犯人が、
警察に追われているような、言い知れぬ恐怖が全身を覆うのです。

で、それとは裏腹に、
株を売って損失を出したにもかかわらず、
その恐怖から逃れられた安堵感で、なぜかほっとするのです。

あまりに滑稽な話です。

その後も、懲りずに個別株の売買を
続けましたけれども、

「パニック売り」がトラウマになったのか、
最初のような大勝ちはできなくなりました。

明らかに株式投資は、
素人が簡単に立ち打つことができるものではないとわかったのです。

(そうは言いながら、まだちまちまとやっていますが)

ここ何年か、株主優待で生活していることで有名な、
あの桐谷さんの本を何冊か読んだのですが、こんなことが書かれていました。

まさにあの頃の私のことで、笑っちゃいました。